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【「不動産投資で不正に消費税を還付」事件に思う事】 [不動産投資]

先日ニュースになった消費税の不正還付事件について考えたいと思います。

手錠された手でPC操作

以前から不動産投資の世界ではこの手の還付の手法はよく取り沙汰されていました。

『違法ではないけどグレー』そんな感じの手法で、まだ一般的でない頃には『商材』として『売られて』いたりしました。

『商材』になればいずれは『知る人ぞ知るちょっとおおっぴらにはできない節税法』から、一気にポピュラーになり誰もがやり始め目立ってきて…そして当局が規制する。

そんな流れになったという背景のあるお話です。

まずは記事を引用して概要をご紹介しますと…


ほけんの窓口:創業者を立件方針 消費税不正還付の疑い

 複数の保険会社の商品を扱う乗り合い型代理店を展開する「ほけんの窓口グループ」(東京都渋谷区)の創業者、今野則夫前社長(58)が、不動産取引を巡って消費税数千万円を不正に還付されていた疑いがあるとして、東京地検特捜部は消費税法違反容疑で前社長を立件する方針を固めた模様だ。前社長の知人男性が不正還付の手口を指南した疑いもあり、近く関係先を家宅捜索するとみられる。

 関係者によると、前社長が代表を務める資産管理会社「東京レジデンス」(東京都新宿区)は都内のマンション2棟を購入し消費税を支払ったが、中古自動車を販売したり、コンサルタント料を受け取ったりしたように装って架空の売り上げを計上し、消費税数千万円の不正還付を受けた疑いが持たれている。

 消費税は、売り上げに伴う消費税額から、材料購入など仕入れにかかった消費税額を差し引いた分を事業者が納付する仕組み。一定額は還付を受けられるが、マンション賃料収入には消費税がかからないため、他に売り上げがない場合は還付を受けられない。このため前社長は経理操作をしたとみられる。

 ほけんの窓口グループによると、前社長は4月18日、国税当局に申告漏れを指摘されたことを理由に退任。同グループは1995年に設立され、2012年に現社名に変更した。12年6月期の売上高は139億円。店舗数を400超に伸ばしている。
毎日新聞 2013年06月27日 より引用



消費税はその名の通り、『消費』に対して課税する税金ですので、流通過程にある企業で消費税のかかる物品を購入しても消費税がかかりません。

購入する時に消費税が免除になるわけではなく売上に含まれる消費税を全額税務署に納めずに支払った消費税を差し引いて納税することにより消費税を『実質的に』支払わずに済ませているのです。

これを消費税法では『仕入税額控除』と呼び、適正な処理になっています。

この仕組みは、こちら記事に書いていますので詳しく知りたい方はクリック
【消費税 95%ルールが適用できない!?】

ただ、この『支払った消費税を差し引くこと』ができるのは、消費税がかかる売上に貢献した仕入に対してだけだ、という考え方がベースにあります。

例えば、『非課税』売上しかないような企業では『仕入税額控除』は一切できませんので、消費者とまったく同様に消費税を負担することになります。

そして不動産投資における『売上』は、まさにこの『非課税』なのです。

家賃収入は居住用に限り非課税です。

店舗の家賃とか工場の家賃は消費税は課税されますが、アパートとかマンションの様に居住用には消費税はかかりません。

従って居住用の不動産のみの大家業の方は仮に課税事業者になるほどの沢山の売上があっても『仕入税額控除』を受けることができません。

ところが…

1棟の中古マンションを購入して不動産投資を始めるとなると消費税を多額に支払います。

例えば…

1億円のマンションで土地と建物の比率が6:4だとして4,000万円の建物だったとすると支払う消費税は4,000万円/1.05×0.05で約190万円になります。

「これをほぼ全額取り戻すことができますよ♡」って囁かれたら、気持ちがぐらつく人もいるでしょう。

では、どうやるかというと…

『無理やり』課税売上を作ってしまえばいいのです。

よくやる手法は自動販売機。

アパートやマンションにジュースなどの自販機を設置してその収入を『課税売上』として計上するわけです。

ただ『仕入税額控除』は全売上の課税売上の占める割合しか控除できませんので、その課税期間(普通は1事業年度です。個人事業者なら1月から12月までの1年間。)の売上の比率が問題になります。

例えば4月に投資用マンションを購入し、9ヶ月の家賃収入が年間990万円あって、自販機収入が10万円だと、課税売上割合は、

10万円/(990万円+10万円)=1%

となります。

そうすると購入したマンションの消費税の『仕入税額控除』は190万円全額ではなく、190万円×課税売上割合、つまり1万9千円しか控除できません。

じゃぁ、どうするか…。

12月にマンションを購入して、ちょっとだけ家賃収入を計上します。

例えば10日分とか…。

10日分だと11万円です。

さらに空室があればもっと下がります。

そしてジュースの売上は、10万円ばっちり売れたとすると…

課税売上割合は、

10万円/(11万円+10万円)=47.6%

となります。

そうすると『仕入税額控除』は…

190万円×47.6%

で約90万円になります。

しかも消費税の課税売上は10万円ですから10万円の売上に係る消費税は、5千円で控除の方が断然多いです。もちろんジュースには仕入代金もあります。

仮に5万円の仕入値なら消費税の計算はこうなります。

『受け取った消費税』-『支払った消費税』×課税売上割合=『納税すべき消費税』

つまり、

(10万円×5%)-(5万円×5%+建物購入代金に係る消費税)

=5千円-(2万5千円+190万円)×47.6%

計算すると▲911,300円になります。

あれ?マイナスです。

マイナスになったらどうなるのでしょうか?

そうです、その場合、消費税が還付されるのです。

90万円の還付金額が大きいか小さいかは人それぞれでしょうが、更に課税、非課税の比率を変えるように工夫をしたりすれば…

また購入した不動産がもっと大きな額なら…

ちなみに本来、年間10万円しか課税売上がない事業者は消費税は免税事業者になります。

でも還付を受けるために『課税事業者』を進んで申請して還付を受けることにしています。


手法としてはこんなところです。(細かなところは省略していますが…)

ちなみに今回取り上げられた事件では課税売上の計上を『自販機』ではなく自動車販売やコンサルタント料などで行ったということです。


こんな手法、確かに法律を読み解いていけば逸脱はしていませんのでグレーな感じはしますが、なかなか正面からは非難しにくいのかもしれません。

とは言え、このような類似的な手口が横行し税務当局は苦々しく思っていたことでしょう。

そして派手になってくれば本腰を入れて規制するのが常です。

税務当局はおおっぴらにこんなことやられては税収も減るしメンツにもかかわるでしょう。

2010年4月以降はこの方法がほぼ使えないように法律を改正しました。

細かな説明は専門的な部分があるので省きますがご興味がある方はコチラを

自動販売機を利用した消費税還付手法の終焉

結論として以前の様に簡単にはできなくなりました。

ただ現在も『法改正後も合法的に還付ができます』としてコンサルしている税理士さんなどもいます。

もちろん条件に合致する大家さんもいますので不可能ではないですが、従前の手法を利用する人たちのニーズには必ずしも合致していないかもしれません。


さて、別のニュース記事ではさらにこの事件を辛辣な表現で伝えています。


消費増税控え「国だます詐欺」に監視強化

 消費税の不正還付は税金をだまし取ることになるため「国に対する詐欺」とも呼ばれ、脱税の中でも悪質性が高いとされる。昨年6月までの3年間で発覚した不正還付は約51億円。報酬目当てに手口を指南する「脱税コンサルタント」も暗躍する。来年4月に消費増税も予定される中、捜査・国税当局は不正に対し警戒を強めている。

 消費税は、事業者が「売り上げ時に消費者から預かった消費税額」(A)と「仕入れ時に支払った消費税額」(B)の差額を国に納める仕組みだ。Bが増えるほど納税額は減るほか、BがAを上回れば消費税の過払い状態となり、還付を受けられる。

 石沢靖久容疑者はこの仕組みを悪用。自動車の販売など架空の取引を計上してBの割合を増やすことで、不正還付を受ける手口を指南していた。

 今野前社長は税務当局などの調査に「石沢氏に教わった方法で合法だと思っていた」と説明したが、捜査関係者は「税理士でもない石沢容疑者から聞いた方法を実践した以上、『違法と知らなかった』では済まされない」と指摘している。

 別の捜査関係者は、来年4月に予定される消費税率8%への引き上げを前に「消費税の不正還付に対して、捜査当局や税務当局がマークを強めている面もある」と指摘する。税率が高くなれば事業者が預かる消費税も増え、脱税の動機が強まる懸念があるためだ。

 昨年11月には特捜部が、消費税の脱税を指南していた経営コンサルタントの男(65)と、顧客の経営者ら計3人を逮捕。6月には岡山地検も同容疑で清掃会社役員の男を逮捕している。

 この捜査関係者は「不正還付は国をだますという意味で悪質。節税アドバイスに安易に飛びつくことは、犯罪になりかねない」と警鐘を鳴らしている。
msn 産経ニュース 2013.6.28 より引用



中古車業者でもない会社の自動車販売やコンサルタント料なんて名目の売上は税務当局に目の付けられやすい項目です。

新聞等の記事ではこれらの売上を『架空売上』と表現していますので、税務当局は『嘘っぱちのでっちあげの売上』という扱いなのでしょう。

先述の自販機の売上は架空ではなので『自販機組』よりも悪質と判断されたのでしょう。

しかも当事者は保険業界で一躍名を上げた有名人ですので恰好の標的だったのかもしれません。

『みせしめ』にはもってこいというか…。

ちなみにこの事件の発生時期は税務当局が法改正する前の出来事の様です。

ということは、もし『架空売上』である点が問題視された事件でないのなら『自販機組』にとっては大変なことなります。

税務の時効は7年間ですから一斉に摘発でもされたら大変です。


仮に法律上はつじつまが合っていても、税務当局には『租税回避行為』という伝家の宝刀があります。

wikipediaの説明がとてもわかり易いので引用させて頂きます。


租税回避(そぜいかいひ; tax avoidance; Steuerumgehung)とは

 租税回避(そぜいかいひ; tax avoidance; Steuerumgehung)とは、通常用いられる法形式を回避した経済的に合理的理由のない異常な法形式による取引を行うことで、租税負担の軽減または排除を行うことをいう。租税法律主義によって形式的には合法だが、租税公平主義等の観点から容認できないとして、このような抜け道をふさぐために、実質主義の観点から税法上の個別又は一般の否認規定をもうけて課税の対象とされることがある。

1 脱税との相違
 脱税は、課税要件の充足という事実を隠匿する行為であり、不法に税の負担を逃れることである。一方租税回避は、課税要件の充足それ自体を回避するものであり、形式的にはあくまで合法な行為である。よって両者は、税法の規定に違反しているか否かによって峻別される。もっとも、法形式の回避を装っていても、実際は事実の隠匿であることもしばしばあり(隠匿された課税要件該当事実が認定されることを、しばしば、事実認定レベルにおける否認という。)、注意を要する。また、私法上の性質決定の基準がはっきりしないことの影響で、事実の隠匿か法形式の回避かの区別はしばしば困難を伴い、国税当局との紛争に発展することもある。

2 節税との相違
 節税とは、税法の規定の想定する範囲内において取引を行うことで、課税額の低減を図る行為である。一方租税回避とは、想定の範囲を超えた異常な法形式を採る点において、節税と異なる。ただし、両者には明確な差異はなく、社会通念により区別されるにとどまる。

3 租税裁定行為との関係
 ある取引を行うにあたって、同一又は類似の経済的意義を有する方法がいくつか考えられる場合に、当事者からすればあえて税負担の重い取引を行う理由はないから、通常は、税負担の軽い方法が模索され、選択されることになる。これを、租税裁定行為という。租税裁定行為は、税法の想定する範囲内のものとそうでないものがあり、したがって、状況次第で節税に当たる場合と租税回避に当たる場合とがありうる。

4 実質課税の問題点
 租税回避は、あくまで形式的には合法な行為に属する。しかしながら、想定の範囲を超えた異常な法形式を用いていることから、租税法上その法形式を容認するか無視するかという問題が生ずる。
 租税回避に対し、実際に行なわれた法形式を租税法上は無視し、通常行なわれるべき法形式に対応する課税要件が満たされたものとすることを「租税回避行為の否認」という。ドイツ租税通則法第42条は「租税回避行為の否認」を認めた代表的な規定である。日本にはドイツ法のような総則的規定はないが、所得税法第157条のように個別の否認規定が設けられている。
 租税法上、個別に租税回避を否認する規定があれば、同規定に基づいて租税回避を否認することに問題はないが、租税回避を否認する規定がない場合の取り扱いについては議論が分かれている。否認を認めないとすると、租税回避行為者と通常の法形式によった者との間に不公平が生ずる。反面、租税回避を否認し課税を行なうとすると、租税法律主義に反する結果の招来という問題が生ずる。通説では、法律の根拠(総則ないし個別の否認規定)がない限り、租税回避行為の否認は認められないと考えられている。この通説の立場からは、租税回避に対応するためには、新たな租税回避の類型が現れるたび、個別の否認行為を迅速に立法する必要があるとの主張がなされている。
wikipedia より引用


自慢げに『合法』をうたった節税はときとしてこの『租税回避行為』の下に膝を屈することになるのです。

ただし、wikipediaの『4.実質課税の問題点』にも記載されている通り租税回避行為を課税するには税務当局側も結構理論的積み上げをする必要がありそうです。

ですから『間違いなく仕留められる』ように手間がかかっても法律を作って『戦いに勝ちやすい』アイテムを得てから行動を移したりします。

そのトリガー(きっかけ)は『派手にやってくれてるじゃねぇか』と、ある程度黙認されていた『寝た子』を起こすほどの『やりよう』かもしれません。

決して私は『この様なことはひっそりとやりましょうね』って奨励しているわけではありません。(笑)

現在の様に情報の伝播スピードが速くなってくると、そして『情報』を『商売のネタ』にすることが昔よりやりやすくなっている現代では『グレー』に手を出すのはリスクがあることを承知する必要がありそうです。

つまりは『君子危うきに近寄らず』の喩えを良く胸に抱き…。

え?「ビジネスは『虎穴に入らずんば虎児を得ず』だろう」って? 

※今回の記事はあくまでも私見を述べたに過ぎません。
税金の申告は自己判断にてお願いします。





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