【購入翌年以降のキャッシュフロー 中古区分マンション編】 [不動産投資]
前回は中古区分マンション投資の購入初年度のキャッシュフローについて具体例を用いて説明しました。
⇒ 【購入初年度のキャッシュフロー 中古区分マンション編】
今回は購入翌年以降のキャッシュフローがどうなるか…
更に具体例で説明したいと思います。
不動産投資の例(区分所有マンションの購入)
物件購入価額:
1,000万円(内消費税 384,615円)
諸費用:
670,384円(消費税込み)
<諸費用内訳>
消費税抜き | 消費税 | 消費税込み | |
仲介手数料 | 348,461円 | 17,423円 | 365,884円 |
契約書印紙代 | - | - | 5,000円 |
借入金契約書印紙代 | - | - | 10,000円 |
借入金手数料 | 100,000円 | 5,000円 | 105,000円 |
登録免許税 | - | - | 90,000円 |
司法書士報酬 | 90,000円 | 4,500円 | 94,500円 |
建物
築20年3ヶ月(RC造 中古区分マンション)
固定資産税評価額
〔建物〕640万円
〔土地〕160万円
自己資金:670,384円
借入金:1,000万円
金利:3%(変動金利)
返済期間:20年
返済方法:元利均等
返済金額:55,460円/月
修繕積立金:10,000円/月
管理費:5,000円/月
現入居者:残契約期間1年6ケ月 家賃8万円/月
賃貸管理手数料:家賃の5%+消費税
不動産取得税:10万円
固定資産税:50,000円/年
所得税率:20%(住民税率:10%)
2年目の追加条件
更新料入金:80,000円
更新手数料支払い:80,000円+消費税=84,000円
購入時に入居者がいましたが契約の残期間は1年6ヶ月でした。
2年目の途中で更新時期を迎えましたが無事契約更新ということで更新料を得られました。
更新手続きをする賃貸管理会社へは逆に更新手数料を支払います。
手数料には消費税がかかるのでキャッシュフローとしてはマイナスとなりました。
こんな状況でキャッシュフローはどうなっていくのでしょうか?
購入翌年の各キャッシュフロー項目の計算
今回はキャッシュインとキャッシュアウトを分けずにインならプラス、アウトなら▲で表してみます。- 家賃収入:+960,000円
80,000円×12ヶ月=960,000円 - 更新料収入:+80,000円
- マンション管理組合への支払い:▲180,000円
「修繕積立金」+「建物管理費」 15,000円×12か月=180,000円 - 賃貸管理会社への支払い:▲134,400円
賃貸管理手数料 4,200円×12ヶ月=50,400円
更新手数料 84,000円 - 借入金の返済:▲665,520円
55,460円×12ケ月=665,520円
元利均等の借入金の場合は金利に変動がなければ元利合計額に変化はなく返済額は毎月一定です。従って前年と同額となります。 - 固定資産税の納税:▲50,000円
- 所得税:+37,532円
所得税の確定申告は1月1日から12月31日の分を翌年の2月から3月の間に申告します。
確定申告により納税額が確定したら、3月15日までに納税することになります。
従って不動産投資によって発生した所得にかかる所得税は、翌年のキャッシュフローに影響することになります。
それでは今回の例で所得税はどの様になるのでしょうか?
こちらをご確認下さい
⇒ 【サラリーマンの不動産所得と税金計算(中古区分マンション・初年度編)】
今回の例では所得は、▲187,663円とマイナスとなりました。
この様に不動産所得がマイナスになりますと給与で支払った所得税から引くことができますので結果として『還付』が受けられます。
所得は個人には依存しませんが、所得税は個人に依存します。
所得税は2つのルールがあります。
※1『損益通算』の決まりによって不動産所得と給与所得は合算してから税率を掛ける
※2『累進課税』なので税率は損益通算で合算した所得の大小によって決まる
つまり、給与所得の大小によって税率は決まりますので、人によって適用される税率が異なり結果として不動産所得によって発生する所得税は人によって異なることになります。
今回の例では税率は20%としていますので、不動産所得により還付される税額は…
▲187,663円×20%=▲37,532円
となります。
還付金は確定申告してから1ヶ月から1ヶ月半くらいで振り込まれてきます。
※1
損益通算の決まりは、損益通算すべき所得と損益通算できな所得があります。
給与所得以外の所得がある場合には当てはまらない場合もあります。
※2
税率は合算後で決まります。給与所得のみのケースでは税率が20%でも不動産所得が増加したために税率が1段階上がって異なる税率が適用される場合もあります。
- 住民税:+18,766円
住民税は所得税の確定申告で計算された所得に税率を掛けて計算されます。
住民税の税率は所得税と異なり所得の大小にかかわらず10%です。
従って還付される税金は…
▲187,663円×10%=▲18,766円
となります。※3
※3
実際には住民税は、前年の所得により翌年の住民税が決定する仕組みです。
ですから厳密に言うと今回のケースでは『還付』ではなく『翌年の納税額の減少に寄与した』と言う方が適切かもしれません。
説明の簡素化のため、あえて『還付』という表現にしておりますのでご了承下さい。
また住民税は翌年6月から翌々年5月まで1年間かけて毎月の給料から『特別徴収』されます。
従って厳密には上記の『納税額の減少寄与分』は、翌年には以下のキャッシュフローが減少します。
18,766円×(7ヶ月/12ヶ月)=10,947円
購入翌年の年間のキャッシュフロー(収支)
〔キャッシュインフロー〕-〔キャッシュアウトフロー〕=1,096,298円-1,029,920 円=66,378円
この例では結論として初年度のキャッシュフローはプラス66,378円でした。
更に進めて3年目のキャッシュフローはどうなるでしょうか?
前提条件として、現在の入居者はそのまま同条件で入居し続けて頂いてその他の条件にも変更がないものとします。
つまり金利も変更なく固定資産税に増減もなくマンションの管理費や修繕積立金、管理手数料にも変更が無かったとします。
そうするとキャッシュフローは2年目と同一となるのでしょうか?
いえ、そうはなりません。
『所得税』と『住民税』は異なってきます。
2年目のキャッシュフローにおいて『所得税』と『住民税』は初年度の『所得』により決まりました。
そして初年度は『購入時の諸経費』や『不動産所得税』という、非経常項目の『経費』が発生していたので所得減少要因がありましたが、2年目の所得計算には関わらなくなるため所得は増加します。
また借入金の返済額に含まれる『支払利息』は年々減少していきます。
返済額のうち、経費として認められるのは、支払利息部分だけですので、ほっておいても所得は増加傾向を示します。
従って3年目の納税額は2年目より増加します。還付金があるケースでも還付が納税に逆転したり還付金が減少したりということでキャッシュフローは初年度よりも確実に減少します。
3年目以降のキャッシュフローが具体的にどんな風になるのかを検証してみましょう。
購入3年目の各キャッシュフロー項目の計算
キャッシュインならプラス、キャッシュアウトなら▲で表します。- 家賃収入:+960,000円
80,000円×12ヶ月=960,000円 - マンション管理組合への支払い:▲180,000円
「修繕積立金」+「建物管理費」15,000円×12か月=180,000円 - 賃貸管理会社への支払い:▲50,400円
賃貸管理手数料 4,200円×12ヶ月=50,400円 - 借入金の返済:▲665,520円
- 固定資産税の納税:▲50,000円
- 所得税:▲821円
こちらをご確認下さい
⇒ 【サラリーマンの不動産所得と税金計算(中古区分マンション・次年度以降編)】
今回は還付ではなく納税となりました。 - 住民税:▲410円
所得税の給与天引きのことを『源泉徴収』といいますが、住民税の場合は『特別徴収』といいます。
給与所得にかかる住民税は『特別徴収』により納税することを原則としていますが他の所得にかかる住民税は納税方法を納税者が任意に決めることができます。
自分で納税することを『普通徴収』といいます。
どちらの納税方式でも損得はありませんが、2点の大きな違いがあります。
①特別徴収は、給与天引きを利用した12ヶ月の分割払いです。
従って大した違いではないかもしれませんがキャッシュフロー的には特別徴収が有利です。
②不動産所得により給与収入のみよりも特別徴収額が増加する場合には、特別徴収事務を行う『勤務先』にその情報が市町村から伝達されます。
従って不動産投資を行っていること(それがどの程度儲かっているのか)を勤務先に知られたくない人は所得税の確定申告時に『普通徴収』を選択した方が良いです。
ちなみに所得がマイナスで住民税が減額されるケースでは住民税には『還付』という考え方はないので必ず会社に通知されますので注意が必要です。
購入3年目の年間のキャッシュフロー(収支)
〔キャッシュインフロー〕-〔キャッシュアウトフロー〕=960,000円-947,151 円=12,849円
3年目はかろうじてキャッシュはプラスになりました。
そして変動項目、例えば家賃が変更にならない、退去が無い、専有部分の修繕が無い、固定資産税も変動が無い、税法の改正が無い、給与所得の急激な増減が無い、など諸条件に変動がなければこのキャッシュフローで年々変動するのは所得税と住民税の部分だけです。
先述の通り、変動要素は借入金の支払利息が少しづつ減少することによる、若干の所得増加、所得税・住民税増加によるキャッシュフローの減少です。
従って、このキャッシュフローが基本的に『年間のキャッシュフローの最大値』と言えるでしょう。
利回り9.6%の物件を諸費用を除き全額借入金(金利3%20年返済)で賄って購入した場合のキャッシュフローの一例です。
キャッシュフローはこの様に計算しなくても不動産投資に関わるお金を一つの預金口座で管理すれば簡単に計算できます。
その年の12月31日の残高から1月1日の差し引けばいいだけです。
とても簡単です。
但し、これも未知数になっている人もいるようですが…。
不動産から「あがった」お金を生活費に回したりクルマを買っちゃったりすれば…
ただキャッシュフローは金額の増減だけ見ても良しあしを判断できない場合もあります。
その源泉をきちんと把握していれば大きなメリットがあります。
そのメリットとは、『未来を予測』しやすくなるということです。
予想外の修繕をしなければならなくなったり、空室が予想以上に続いてしまったり、予想しえない資金の増減はあるかもしれませんが、通常の企業経営につきものの『資金繰り』と比較すればはるかに単純です。
特に個人で不動産経営をしているうちは企業でもっともやっかいな『人件費』は発生しません。
輸入品を購入することもないので為替の影響も受けませんし、家賃の相場に変動があるといってもそれほど急激でありませんし、販売品目のトレンドなどから生じる『売上の変動』も検討の余地がありません。
ですから『結果』だけではなく、この様な『キャッシュフロー』の『構造』を理解していれば、かなり予測することが容易です。
変動要素に関して自分なりの予測、例えば『ベストな予測』と『最悪な予測』をしていれば、ある一定の範囲の枠内での予測は比較的簡単かと思います。
もちろん、火災が起こったり天変地異が起こって事業継続に大きな支障をきたすなどの予測までは盛り込めませんが…
次回以降では、キャッシュフローの項目別の動向を理解した上で、どの様にその数字を活かしていくのかなどを検討したいと思います。
この記事は2013年5月16日現在の法律等に基づいて書かれていますが、各自の計算についてなんら保証するものではありません。
実際に計算する場合には税務署、税理士などの専門家へご確認の上計算をお願いします。
<(_ _)>
実際に計算する場合には税務署、税理士などの専門家へご確認の上計算をお願いします。
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〔07〕
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