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【海外からの配信にも消費税課税導入? アマゾンにだって課税するぞ!】 [会計・経理・税務]

今回お伝えするのは現在消費税が課税されない海外からの配信サービスに政府が消費税を課税しようとしているというお話です。

本日の日経新聞の1面にこんな記事が出ていました。

音楽など海外の配信企業に登録制 消費課税漏れ防止
財務省、14年度から導入方針
財務省は海外からインターネットで配信される音楽や電子書籍に消費税を課すため、海外企業への登録制度を導入する方針だ。欧州連合(EU)が採用する域外企業への課税方式を参考に、消費税がかかっていない海外からのネット配信に課税し、海外企業から徴税する。消費税がかかる国内のネット配信との不公平をなくし、内外の企業が対等に競争できる環境を確保する。
日本経済新聞より抜粋


配信する企業の事務所が国外にあれば、消費税法上は課税対象外になります。

つまりネット配信の場合には海外にネット配信を行う拠点があれば海外企業でも国内企業でも、その『配信』というサービスにかかる取引は日本の消費税の管轄外となるわけです。

海外のアマゾンから配信を受けて映画を観ても消費税はかかりませんが楽天で電子書籍を購入すれば消費税がかかるわけです。

『同じもの』を販売しても、日本の企業は消費者が負担する価格が消費税分だけ高くなり、競争力が落ちるわけです。(為替とかいろいろな要素もありますが…)

そして、この不公平の壁を乗り越えるために楽天などの日本勢も以下のような検討に入ったわけです。

楽天、海外から電子書籍・広告の配信検討 消費税ゼロ

楽天などインターネット関連の大手企業が、海外拠点から日本に電子書籍や広告を配信する検討に入った。電子書籍市場が立ち上がるなか、消費税がかからずに国内向け配信ができる海外ネット大手と競争条件をそろえるためだ。国境を越えたネット取引への課税は世界的な課題となっており、国内でも議論が高まりそうだ。
日本経済新聞より抜粋


日本の企業の競争力が衰えることを防ぐことも大事なんでしょうが、財務省は日本企業が消費税を回避する行動に出られては大変だということで、8%に増税するまでに手を打っておこうということじゃないかと考えています。

記事では財務省は8%へ増税する際に法律の改正を整備したいという風に報じています。

もし既に海外からの配信サービスを利用されている方は法律の改正により影響を受けることになります。

また合法的に楽天などの日本企業が『日本人向け』にサービスが展開できなくなれば、「実現したら消費税還元セールにありつけたであろう機会」を失ってしまうとも言えます。

5%でもバカにできませんが、これが8%、10%、更にはヨーロッパ並みに20%なんて消費税率になったら、消費税がかかるかどうかは本当に大きな差になります。


ところで…

何故、『消費税がかからないか』ということをちょっと掘り下げて解説したいと思います。

以前の記事でも少し触れましたが、

【消費税あれこれ 輸出企業の益税って…】

【消費税あれこれ ~中古住宅購入と消費税~】

消費税の課税の対象には有名な『課税の4要件』というものがあります。

(1)国内取引であること

(2)事業者が事業として行っている取引であること

(3)対価を得て行う取引であること

(4)資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供であること

課税の4要件とは、

『上記の4つのことを全て満たしたものだけに消費税を課税します』ということです。


(2)は、一般の個人売買などには適用されないということです。

(3)は、無料の取引には適用されないということです。

(4)は、「販売」「レンタル」「サービス」という取引にかかるということです。

そして、今回の話題は、(1)の『国内取引』であること、です。


ここでいう、国内取引、字面だけ見ると簡単そうですが、実務では意外にいろんなことを想定しなければなりません。

基本は…

『販売』なら…販売した(商品を引き渡した)場所が国内かどうかで判定します。

『レンタル』なら…レンタルする場所が国内かどうかで判定します。

『サービス』なら…そのサービスを提供する場所が国内かどうかで判定します。


しかしいろんな問題があります。

例えば『販売』。

カメラとかお菓子とか、お店で「はい、どうぞ」って手渡すような商品なら判定に疑問が挟まる余地はありませんが、そうでもない商品も結構あります。

例えば、公海上に浮かんでる船を「はい、どうぞ」って言った場合はどうか?

法律ではきちんと規定されています。

『船舶の登録をした機関の所在地』

これが法律で規定された内容です。よく『イベリア船籍』なんて言葉を聞きますね。

イベリアは国外ですから日本の領海内に係留されているイベリア船籍の船舶を中古販売しても消費税は課税されません。

じゃぁ、飛行機はどうでしょう? 

空を飛んでいる飛行機の中で契約書にサインして飛行機のカギ?を引き渡し、代わりにアタッシュケースに入った札束をもらうなんて取引があったら、いったい国内取引なのか、国外取引なのか?

航空機の登録をした機関の所在地(登録を受けていない航空機にあつては、当該譲渡又は貸付けを行う者の譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地)

こんな風になっています。やっぱり登録した機関の所在地です。

ただ、航空機の場合、登録なしってケースがあるようで、そういう場合はその販売をした事務所がどこにあるかで国内外判定をするのです。


更に、外国人の個人事業者が日本にやってきて手広く商売を始めたらどうでしょうか?

日本で露天商をやって販売した場合…

それが『事業』となれば、外国人であっても日本国内なら消費税は課税対象です。

(但し免税範囲がありますので、ある程度の売り上げ規模がなければ結局免税になりますが…)


『サービス』なら…

日本企業が日本のお店でネイルサロンのサービスを行えば消費税がかかりますが、海外店舗で日本人ネイリストが日本人向けにサービスをしても消費税はかかりません。

レンタルも同様です。


国際電話はどうでしょう?国際郵便はどうでしょう?

すべて法律で決まっています。



そして、今回の様な電子書籍の販売は配信する側の事務所等の所在地で判定されるため、アマゾンは課税対象外楽天は課税対象となるのです。


ここで問題になるのが、法律に漏れがあるわけではないのですが、法律を作ったときに『ネット配信』を想定していないということです。

仮にうっすらと想定していたとしても、『微々たるものだ』と無視できる程度と考えていたのではないかと想像されます。

しかし、これだけハードもソフトもネット世界での商売が整ってくると、昔作った条文のままでは『とりっぱぐれる』商売が出てきてしまうということです。

しかも海外企業との競争という面では、法律が足を引っ張ってるとも言えます。

各方面でネットに関わる法整備の遅れが指摘されていますが、税法もご多分に漏れないといった感があります。

さすが海外に拠点を移してまで、消費税を回避(※脱法、違法という意味ではありません)しようとする動きが出てくると、「手をこまねいて」いるわけにはいかないというところでしょうか…。


さて、具体的に海外企業への課税をどうしようとしているかとういうと、海外企業に登録制を導入するという、何とも心もとない方法で対応しようとしているみたいです。

こういうことをするから抜け道が多く、税金って『正直者が馬鹿を見る』的な考えを助長しちゃうって私は思うのですが、税務当局は結構真剣に海外企業へ登録を呼びかけようと考えているようです。

もちろん、海外の『税務当局』とも連携してのことのようですが…。

現在は、ITの普及や世界がボーダーレスになって、しかも技術の変化が目まぐるしく、法律の適応スピードが追いついていないような気がします。


今回の『海外からのネット配信にも課税』ということも、消費者サイドから見たら、確かに「また税金がかかる方向になっちゃうのか」と考えられますが、見方を変えれば、

「法律の整備が遅れているために特定の業者だけ有利な抜け道を作っちゃっているから、本来取れるところから税金がきちんと回収できてない。

そのツケを一般消費者への増税で穴埋めしている。

そういうことをもっときちんと精査すればそもそも増税なんかしなくてもいいんじゃない?」

なんてことも言えるかもしれません。

例えば、所得税だってネットで商売している人たちの所得を補足するのは大変難しく、とても『お上』は、回収しきれていないと思います。

平等に回収できていれば、「子どもの扶養控除」だって「いつの間に無くなってしまった」なんてことをしなくても良かったのでは?と思ってしまいます。


増税って、もっと『最後の手段』だと考えて、できる努力をして欲しいって思います。

お金が無くなったら、「足りなくなったから、お金ちょうだい」って、おねだりしている子どもの様な気がしてしまいます。

もっと、『やりくりする努力をしてみ』って言いたいところです。

皆さんはどう思いますでしょうか?





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