【競馬のはずれ馬券を経費として認めさせた男】 [ピックアップ!]
「競馬で当てた賞金の税金を申告しなかった」として、
巨額の「競馬脱税事件」として注目を浴びた裁判の判決が出て更に注目を浴びました。
それは、競馬のはずれ馬券を経費として初めて認めさせたという点で「検察を敗訴」にしたからです。
裁判の概要は以下の新聞記事の通りです。
この裁判での争点のうち、この被告の『所得はいくらか?』という点ですが、通常の競馬の配当のような『賞金』が『一時所得』に該当するにもかかわらず、雑所得として認定したというところがポイントです。
所得税法上、一時所得と雑所得では所得計算も所得税計算も異なります。
従って、所得のカテゴリーをどうみなすかによって結果も全然異なります。
通常のギャンブルの『戻り』が一時所得とみなされるところ、今回のケースでは雑所得にみなされました。
『雑所得』には『必要経費』という概念があり、『一時所得』にはその概念がない、という点で所得税を計算する上で有利な考え方が導入可能となります。
ですから、今回の判決が、即、「はずれ馬券の購入費用が当り馬券の経費として認定される」ことを肯定したわけではない、ことに注意が必要です。
資産運用として反復的な馬券の購入をしていたからこそ認められた、かなり特殊なケースと言えます。
『特殊なケース』として認定された一つ目の理由は、自作の予想システムを使って馬券を継続的に買い続けたという点です。
二点目は、ネット決済による馬券のためはずれ馬券がいくらだったかのかも客観的に証明が容易だという、「証拠力」があったということです。
繰り返しになりますが、今回の判決が出たことで誰もが「はずれ馬券が沢山あれば、競馬の払戻金が課税されない」ということにはなりません。
通常の競馬の払戻金の所得は『一時所得』として以下のように計算されます。
例えば…
(1)予想が的中して払い戻しを受けた金額の年合計…100万円
(2)上記の払い戻しを受けた『当り馬券』の購入代金…20万円
(3)上記の『当り馬券』以外の年間のはずれ馬券購入代金…70万円
だったとします。
一時所得は…
『(1)-(2)-50万円(特別控除)=一時所得金額』 で計算されます。
(3)は計算には無関係です。
従って、
『100万円-20万円-50万円=30万円』
となります。
通常の所得と異なり一時所得は税率を乗ずるのは更に計算された一時所得に1/2を乗じた後です。
例えば、給与所得など他の所得との合計から適用される所得税率が20%の人なら、
30万円×1/2×20%=3万円
が所得税となります。
一時所得には経費が掛かろうが何だろうが、一律最大50万円の特別控除枠があります。
従って、『当たり』が年間で50万円を超えなければ申告義務もありません。
(厳密には不動産所得があるような方で確定申告していると所得がゼロであっても計算義務は生じます。ただサラリーマンの様に確定申告していない人はあらかじめゼロが判っていれば申告義務が生じないので数字を税務署に知らせる機会もありません。)
先日、某お笑い芸人が500万円以上の高額配当を手にしたニュースが世間を騒がしましたが、もし個人で購入していれば当然税金を納めなくてはなりません。
仮に馬券購入代金を1万円とすれば、
500万円-1万円-50万=449万円が一時所得です。
もし、ほかにも『ちょぼちょぼ』当てていればそれらも全部合算する必要があります。
まぁ、仮に他に『当り』が無かったとしても、税金は結構持って行かれます。
彼は結構人気芸人ですから、仮に所得税の最高税率40%だとすると…
449万円×1/2×40%=898千円が所得税となります。
大々的に報道されてましたから、個人で買っていれば当然納税するでしょうね。
さて、ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、今回の裁判、微妙な問題をはらんでいなくもないような…。
そもそも、競馬の賞金に税金がかかる旨は、周知の事実です。
でも、だからといって厳密に上記の計算方法に当てはめて、『正直に』申告義務が果たされている分野とは到底思えません。
今回の様にネット購入は別として、場外も含め窓口で馬券購入する場合には、『個人の情報』を明かす必要がありません。
従って、税務当局がその金額を補足するのは不可能に近いです。
もちろん今回の様に他の資産運用などで多額のお金を動かしている場合には、その出所(でどころ)を税務当局は調べたりしますので、「実は『大穴』を何度も当てた」などと『足がつく』かもしれませんが…。
それでも、いくら当てたかなんて客観的な数字を掴むのは無理でしょう。
恐らく本人ですらわからないでしょう。
ただ、そこはそれ、そもそも当局も厳密にやろうなどとは思っていないとも思えます。
そんなことをしたら、競馬、やらなくなる人もいるかもしれません。
ネットでの購入に関してどの程度、目を光らせているのかわかりませんが高額配当を手にしたら突然「納税義務」があることを感じさせられるのかもしれませんね。
さて、それではパチンコやスロットはどうでしょう?
『本業』としている方は、事業性なども考慮される可能性もありますが、趣味の域でしている場合には、競馬の払戻金と同様に『一時所得』とみなされるでしょう。
計算は競馬の時と同じですが、馬券と異なり、『いくら使ってその賞金を得たか?』の特定は難しいかもしれません。
しかもパチンコは、一度金製品への交換をして、それを換金するというグレーゾーンが存在しますから、厳密な一時所得は『金製品の時価』、更に所持している『金製品の譲渡所得が発生している』なんて考え方も成り立つかもしれません。
そんなグレーな話はあんまり表舞台に出て欲しくないんじゃないかなって思います。
もし今回の裁判の様なケースで、あいまいだった部分が『白黒つけて、ちゃんと納税させろ!』なんてことになったら、かなりギャンブラーを萎えさせ業界の衰退が予想されます。
だって、『日々2万円は買っているけど、月の収支は赤字だ』なんて人がいた場合…。
勝った日は全額一時所得にさせられて、負けた日は一銭も経費として認められないんですから、毎日毎日パチンコしていて時には勝つことがあるけど収支で考えたらまったく勝ってないようなギャンブラーだって、額面通りに考えたら、納税額が発生しちゃうかもしれません。
負けた日の『すってしまったお金』は『はずれ馬券』と同じなんですから…
こんなことを徹底したら…
きっと誰もギャンブルに手を出さなくなるのではないでしょうか?
そして結局、そこからあげられる税金も減ってしまうことでしょう。
また、天下り先にも影響が出ます。
だからきっとあいまいなままが良いと思っているのではないかと…。
裁判をきっかけにこんな話で世間が盛り上がるのもあまり歓迎しないのではないかと…。
ちょっと話はそれますが、スピード違反の取り締まりなんてのがあります。
法定の最高速度は日本では100km/hです。
しかし、この法定速度をはるかに超えて走れるクルマが沢山売られています。
坂道でのエンジンの負荷の問題とか、いろいろ弁明めいたことも議論の対象になっているようですが、エコカー減税に回すお金を少し回せばきっと、坂道でも荷物を沢山積んだクルマでも対応可能な『優秀なリミッター』くらい、開発できるのではないでしょうか?
でもそれをやらないのは、
『法定速度』を自主規制以外の方法で守らせることよりも
大事なことが存在するからではないかと…。
さて、今回の競馬脱税事件では、検察側は判決を不服として控訴する方針を固めたようです。
この判決がきっかけで、新しい動きがあったら注目したいなって思ってます。
※今回の記事はあくまでも私見を述べたに過ぎません。
税金の申告は自己判断にてお願いします。
巨額の「競馬脱税事件」として注目を浴びた裁判の判決が出て更に注目を浴びました。
それは、競馬のはずれ馬券を経費として初めて認めさせたという点で「検察を敗訴」にしたからです。
裁判の概要は以下の新聞記事の通りです。
毎日新聞 2013年05月23日より引用
競馬の所得を申告せず、3年で約5億7000万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われた元会社員の男(39)=大阪市=の判決が23日、大阪地裁であった。西田真基裁判長は大量の馬券を自動的に繰り返し購入した場合、競馬の所得は「雑所得」に当たり、全ての外れ馬券の購入費が経費になるという初の司法判断を示した。無申告の違法性は認め、懲役2月、執行猶予2年(求刑・懲役1年)の有罪としたが、脱税額を約5000万円に大幅減額した。
判決は馬券の所得を一般的に「一時所得」とした上で、「元会社員は多数、多額、機械的、網羅的に馬券を購入しており、雑所得に当たる」と認定した。
判決によると、元会社員は市販の競馬予想ソフトを改良した独自のシステムを構築。専用口座を開いて、インターネットでほぼ全レースの馬券を自動的に購入していた。2007年からの3年で購入した馬券は計約28億7000万円分で、計約30億1000万円の払戻金を得た。収支は計約1億4000万円の黒字だった。
検察側は競馬の所得は一時所得であり、当たり馬券の購入費約1億3000万円だけが経費として控除できると主張、元会社員の3年間の所得を計約29億円と主張していた。
判決はまず、「馬券の払戻金は偶発的、偶然に入り、継続性は認められず、一時所得に当たる」とした。しかし、「元会社員は無差別に一定の条件で網羅的に購入し、多額の利益を得ていた。元会社員は娯楽ではなく、資産運用の一種ととらえていた」と指摘、外国為替証拠金取引(FX)などと同じ雑所得に分類した。
そして、払戻金から全ての馬券の購入費を経費として差し引いた、実際のもうけである約1億4000万円を競馬の所得と結論付けた。
弁護側は「継続的な馬券購入によるFXで得た利益などと同様の雑所得に当たる。外れ馬券の購入費も経費となり、課税処分は無効」と無罪を訴えていた。
元会社員を税務調査した大阪国税局が告発、地検が11年2月に在宅起訴した。起訴分や無申告加算税を含めた追徴税額(05〜09年)は計約10億円。元会社員は「一生かかっても完済できない」として、課税処分の取り消しを求める訴えを大阪地裁に起こしている。
この裁判での争点のうち、この被告の『所得はいくらか?』という点ですが、通常の競馬の配当のような『賞金』が『一時所得』に該当するにもかかわらず、雑所得として認定したというところがポイントです。
所得税法上、一時所得と雑所得では所得計算も所得税計算も異なります。
従って、所得のカテゴリーをどうみなすかによって結果も全然異なります。
通常のギャンブルの『戻り』が一時所得とみなされるところ、今回のケースでは雑所得にみなされました。
『雑所得』には『必要経費』という概念があり、『一時所得』にはその概念がない、という点で所得税を計算する上で有利な考え方が導入可能となります。
ですから、今回の判決が、即、「はずれ馬券の購入費用が当り馬券の経費として認定される」ことを肯定したわけではない、ことに注意が必要です。
資産運用として反復的な馬券の購入をしていたからこそ認められた、かなり特殊なケースと言えます。
『特殊なケース』として認定された一つ目の理由は、自作の予想システムを使って馬券を継続的に買い続けたという点です。
二点目は、ネット決済による馬券のためはずれ馬券がいくらだったかのかも客観的に証明が容易だという、「証拠力」があったということです。
繰り返しになりますが、今回の判決が出たことで誰もが「はずれ馬券が沢山あれば、競馬の払戻金が課税されない」ということにはなりません。
通常の競馬の払戻金の所得は『一時所得』として以下のように計算されます。
例えば…
(1)予想が的中して払い戻しを受けた金額の年合計…100万円
(2)上記の払い戻しを受けた『当り馬券』の購入代金…20万円
(3)上記の『当り馬券』以外の年間のはずれ馬券購入代金…70万円
だったとします。
一時所得は…
『(1)-(2)-50万円(特別控除)=一時所得金額』 で計算されます。
(3)は計算には無関係です。
従って、
『100万円-20万円-50万円=30万円』
となります。
通常の所得と異なり一時所得は税率を乗ずるのは更に計算された一時所得に1/2を乗じた後です。
例えば、給与所得など他の所得との合計から適用される所得税率が20%の人なら、
30万円×1/2×20%=3万円
が所得税となります。
一時所得には経費が掛かろうが何だろうが、一律最大50万円の特別控除枠があります。
従って、『当たり』が年間で50万円を超えなければ申告義務もありません。
(厳密には不動産所得があるような方で確定申告していると所得がゼロであっても計算義務は生じます。ただサラリーマンの様に確定申告していない人はあらかじめゼロが判っていれば申告義務が生じないので数字を税務署に知らせる機会もありません。)
先日、某お笑い芸人が500万円以上の高額配当を手にしたニュースが世間を騒がしましたが、もし個人で購入していれば当然税金を納めなくてはなりません。
仮に馬券購入代金を1万円とすれば、
500万円-1万円-50万=449万円が一時所得です。
もし、ほかにも『ちょぼちょぼ』当てていればそれらも全部合算する必要があります。
まぁ、仮に他に『当り』が無かったとしても、税金は結構持って行かれます。
彼は結構人気芸人ですから、仮に所得税の最高税率40%だとすると…
449万円×1/2×40%=898千円が所得税となります。
大々的に報道されてましたから、個人で買っていれば当然納税するでしょうね。
さて、ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、今回の裁判、微妙な問題をはらんでいなくもないような…。
そもそも、競馬の賞金に税金がかかる旨は、周知の事実です。
でも、だからといって厳密に上記の計算方法に当てはめて、『正直に』申告義務が果たされている分野とは到底思えません。
今回の様にネット購入は別として、場外も含め窓口で馬券購入する場合には、『個人の情報』を明かす必要がありません。
従って、税務当局がその金額を補足するのは不可能に近いです。
もちろん今回の様に他の資産運用などで多額のお金を動かしている場合には、その出所(でどころ)を税務当局は調べたりしますので、「実は『大穴』を何度も当てた」などと『足がつく』かもしれませんが…。
それでも、いくら当てたかなんて客観的な数字を掴むのは無理でしょう。
恐らく本人ですらわからないでしょう。
ただ、そこはそれ、そもそも当局も厳密にやろうなどとは思っていないとも思えます。
そんなことをしたら、競馬、やらなくなる人もいるかもしれません。
ネットでの購入に関してどの程度、目を光らせているのかわかりませんが高額配当を手にしたら突然「納税義務」があることを感じさせられるのかもしれませんね。
さて、それではパチンコやスロットはどうでしょう?
『本業』としている方は、事業性なども考慮される可能性もありますが、趣味の域でしている場合には、競馬の払戻金と同様に『一時所得』とみなされるでしょう。
計算は競馬の時と同じですが、馬券と異なり、『いくら使ってその賞金を得たか?』の特定は難しいかもしれません。
しかもパチンコは、一度金製品への交換をして、それを換金するというグレーゾーンが存在しますから、厳密な一時所得は『金製品の時価』、更に所持している『金製品の譲渡所得が発生している』なんて考え方も成り立つかもしれません。
そんなグレーな話はあんまり表舞台に出て欲しくないんじゃないかなって思います。
もし今回の裁判の様なケースで、あいまいだった部分が『白黒つけて、ちゃんと納税させろ!』なんてことになったら、かなりギャンブラーを萎えさせ業界の衰退が予想されます。
だって、『日々2万円は買っているけど、月の収支は赤字だ』なんて人がいた場合…。
勝った日は全額一時所得にさせられて、負けた日は一銭も経費として認められないんですから、毎日毎日パチンコしていて時には勝つことがあるけど収支で考えたらまったく勝ってないようなギャンブラーだって、額面通りに考えたら、納税額が発生しちゃうかもしれません。
負けた日の『すってしまったお金』は『はずれ馬券』と同じなんですから…
こんなことを徹底したら…
きっと誰もギャンブルに手を出さなくなるのではないでしょうか?
そして結局、そこからあげられる税金も減ってしまうことでしょう。
また、天下り先にも影響が出ます。
だからきっとあいまいなままが良いと思っているのではないかと…。
裁判をきっかけにこんな話で世間が盛り上がるのもあまり歓迎しないのではないかと…。
ちょっと話はそれますが、スピード違反の取り締まりなんてのがあります。
法定の最高速度は日本では100km/hです。
しかし、この法定速度をはるかに超えて走れるクルマが沢山売られています。
坂道でのエンジンの負荷の問題とか、いろいろ弁明めいたことも議論の対象になっているようですが、エコカー減税に回すお金を少し回せばきっと、坂道でも荷物を沢山積んだクルマでも対応可能な『優秀なリミッター』くらい、開発できるのではないでしょうか?
でもそれをやらないのは、
『法定速度』を自主規制以外の方法で守らせることよりも
大事なことが存在するからではないかと…。
さて、今回の競馬脱税事件では、検察側は判決を不服として控訴する方針を固めたようです。
この判決がきっかけで、新しい動きがあったら注目したいなって思ってます。
※今回の記事はあくまでも私見を述べたに過ぎません。
税金の申告は自己判断にてお願いします。
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いや~!!すっきりしました~!!私も以前から競輪競馬ボートやっておりますがもともと寺銭で25%もとっているのに勝った分だけに課税するこの裁判気になっていました~!良かったよかった~!(^o^)v
by macinu (2013-07-08 09:40)
macinuさん、コメントありがとうございます。
そうですね。でも一般の方は九分九厘、はずれ馬券は経費として認められないでしょうねぇ。
by はる (2013-07-09 00:46)