【消費税あれこれ 輸出企業の損得勘定】 [会計・経理・税務]
前回の記事【消費税あれこれ 輸出企業の益税って…】で、輸出の多い企業が国から消費税の還付を受けることについて書きました。
途中まで書いて終わらせてしまったために、輸出企業が消費税で儲けて「不公平だ!」って思われてしまったようです。
今日は、本当に「企業は消費税で儲けているのか?」を検証していきたいと思います。
そして、日本を代表する経済団体が消費税の増税に積極的なのは何故か?についても触れたいと思います。
前回の記事の例では、パソコンを海外に販売する企業A社を考えました。
国内のメーカーからパソコンを60億円+消費税3億円の63億円を払って仕入れて、100億円で海外に輸出します。
消費税は輸出品には課税されないので、100億円ぽっきりを海外のお客さんからもらいます。
納める消費税は…
「売上に係る消費税」-「仕入れに係る消費税」=「納める消費税」
で、計算されますので還付される消費税の金額は、
0円-3億円=マイナス3億円
でした。
A社はこの3億円を国から還付を受けますので「これって儲けちゃってるの?」って話でした。
では、これを検証するためにB社を登場させます。
B社は同じように63億円で国内メーカーからパソコンを仕入れますが、販売先はすべて国内とします。
同様に100億円で売りますが、輸出と違って消費税がかかりますので、お客さんからは消費税5億円を上乗せして105億円をもらいます。
B社の消費税納税額を計算すると…
「売上に係る消費税」-「仕入れにかかる消費税」=5億円-3億円=2億円
消費税に関してA社は3億円をもらえるのに、B社は2億円納めます。
何だか不公平感が余計増してくるような話ですね。
では、今度はA社とB社の「儲け」を計算します。
但し、「利益」だけでなく消費税の納税・還付も加味して、1年でどのくらい「お金」が増えたかで考えます。
A社はいくらお金が増えたか…
入ってきたお金
(海外のお客さんからのパソコン代金収入)100億円
(国から消費税還付金)3億円
【合計】103億円
出て行ったお金
(パソコンメーカーへの仕入れ代金支払)63億円
【合計】63億円
増えたお金
【差引】40億円
B社はいくらお金が増えたか…
入ってきたお金
(国内のお客さんからパソコン代金収入)105億円
【合計】105億円
出て行ったお金
(パソコンメーカーへの仕入れ代金支払)63億円
(国へ消費税の納税)2億円
【合計】65億円
増えたお金
【差引】40億円
A社もB社も結局同じ金額で仕入れて同じ金額(本体価格100億円)で売れば同じようにお金が残る様になっています。
この様に輸出企業にとっても不公平にならないように払った分の消費税はマイナスして納税する仕組みにして消費税について企業が損も得もしないようにしています。
この仕組みが無ければ輸出企業は仕入れに係る3億円の消費税が「払い損」になってしまうのです。
『結論』 消費税は輸出企業を儲けさせることはない
ここまでが理論のお話です。
このことだけであれば上記の結論の通りです。
それ以上でも以下でもなく予見は入る余地がありません。
ただ…
理論と現実は差があるものです。
もうちょっと深く考察する必要があります。
ここから先は「理論」や「法律」、「ルール」に基づく話ではありません。
そのため、「絶対そうなる」とは限りません。
私の考えに基づくものと思って下さい。
まぁ、私の空想小説だと思って読み進めて頂ければ…
今までの例は、現行の消費税率(5%)のケースで説明しました。
では、3年後の税率10%になった場合はどうでしょうか?
もちろん『輸出企業のA社が消費税の還付によって儲けているわけではない』という点については税率が変わってもまったく変わりません。
A社は理論上は消費税率が上がっても損も得もしません。
でも「税率が上がると売れ行きや利益にどう影響するか?」という問題では大きく違います。
A社は海外向け、B社は国内向け。
当然ですが、日本国内の消費者は同じものを買うのに消費税率が上がれば、その分沢山お金を払わないと買えません。
消費税が上がっても給料も上がれば別に構いませんが、給料が上がらずに代金だけ上がれば今まで通り買い物をしていたら帳尻が合いません。
税率が5%から10%に上がると‥‥
本体価格10万円のパソコンの総支払額は10万5千円から11万円になります。
5千円赤字です。
「本当はパソコン古くなったから買い換えたいけど来年まで我慢するか」
って、言う人も出てくるかもしれません。
そんな訳で、B社は10万円のパソコンを10万台売って100億円の売り上げを上げていましたが、増税の影響で8万台しか売れなくて80億円になってしまうかもしれません。
B社は、沢山売るため泣く泣く値下げをするかもしれません。
消費税率は変えられませんので本体価格をさげます。
9万6千円(消費税9,600円)消費税込105,600円でどうだ!
消費税込みをほぼ同じ価格105,600円で9万5千台売れれば、91億2千万円の売り上げは何とか確保できます。
でも、仕入れ価格が6万円のままだと利益は1台あたり4万円から3万6千円に減ってしまいます。
年間の利益は40億円から34億2千万円になってしまいます。
それじゃぁ、大変です。
ここから社員の給料も事務所の家賃も支払わなければならないのですから、家計と同様に帳尻が合わなくなってしまいます。
そうすると、今度は、パソコンメーカーに
「1台6万円じゃ、厳しいから5万7千円にしてよ」ってお願いします。懇願です。
(消費税増税分を下請業者に転嫁しようとする行為は「下請法」で禁止されていますが、安く仕入れできる企業をチョイスするのは競争原理では当たり前のことですから上記の様にお願いされなくても下請業者は値下げせざるを得ないこともあるかもしれません)
他のメーカーにお客さんを取られたら大変ですからこのメーカーC社も値引き要請に応じます。
そうするとB社は1台あたり3万9千円の利益が出ます。
利益は37億円余りに回復します。40億円には届きませんが、他を節約すればなんとかやりくりできるかもしれません。
さて、海外に販売するA社はどうでしょうか?
販売価格に消費税は課されませんので、お客様(海外の)にとって、日本国内の税率が上がろうが下がろうが直接的には関係ありません。
従って、日本の消費税率の増加は海外のお客さんの購買意欲に影響しません。
A社は順調に今までの売り上げをキープします。
しかもC社は最近B社に安くパソコンを卸してます。
当然「うちにも同じ値段で卸してくれないと買わないよ」なんて言えば、C社は値引きに応じなくてはならないかもしれません。
輸出で儲けているA社も国内の相場の低価格化の恩恵を受けることができるかもしれません。
そうするとA社は1台あたり4万円の利益から4万3千円に増益です。
年間売り上げは増税前の100億円と変わりませんが仕入れ値が60億円から57億円に下がって40億円から43億円に増益です。
ホクホクですね。税率が上がってホクホクです。
ここでは「消費税の税率の上昇は、国内の購買意欲にのみ影響する」という、ちょっと大雑把すぎる前提で話をしていますが、実際にはこんなに単純じゃありません。
例えば、国内消費の落ち込みが為替相場に影響して円高、円安、どっちに振れるかで、輸出企業は利益が全然違います。
ただ、そういう不確定要素が大きな影響を及ぼさず直接的な影響だけ考えれば、私の前提条件は、可能性がある話にも見えますよね。
そうしたらA社の様な会社はもしかしたら、
「消費税増税 ウェルカム!」
かもしれませんね。
日本を代表する経済団体は『企業経営者の集まり』です。企業が儲かることが利害の第一です。
その経済団体が消費税増税を推進しているのがもしこんな理由だとしたら‥‥。
少なくとも
『輸出企業は消費税還付金で儲けてる、税率が上がると還付金が沢山入るから増税に賛成しているんだ!』
というような、法律を知っていればその主張が間違っているのがすぐわかるような陳腐な理論を振りかざすよりはましではないかと思っています。
今回は私の空想小説にお付き合い頂きました。
ありがとうございました。<(_ _)>
途中まで書いて終わらせてしまったために、輸出企業が消費税で儲けて「不公平だ!」って思われてしまったようです。
今日は、本当に「企業は消費税で儲けているのか?」を検証していきたいと思います。
そして、日本を代表する経済団体が消費税の増税に積極的なのは何故か?についても触れたいと思います。
前回の記事の例では、パソコンを海外に販売する企業A社を考えました。
国内のメーカーからパソコンを60億円+消費税3億円の63億円を払って仕入れて、100億円で海外に輸出します。
消費税は輸出品には課税されないので、100億円ぽっきりを海外のお客さんからもらいます。
納める消費税は…
「売上に係る消費税」-「仕入れに係る消費税」=「納める消費税」
で、計算されますので還付される消費税の金額は、
0円-3億円=マイナス3億円
でした。
A社はこの3億円を国から還付を受けますので「これって儲けちゃってるの?」って話でした。
では、これを検証するためにB社を登場させます。
B社は同じように63億円で国内メーカーからパソコンを仕入れますが、販売先はすべて国内とします。
同様に100億円で売りますが、輸出と違って消費税がかかりますので、お客さんからは消費税5億円を上乗せして105億円をもらいます。
B社の消費税納税額を計算すると…
「売上に係る消費税」-「仕入れにかかる消費税」=5億円-3億円=2億円
消費税に関してA社は3億円をもらえるのに、B社は2億円納めます。
何だか不公平感が余計増してくるような話ですね。
では、今度はA社とB社の「儲け」を計算します。
但し、「利益」だけでなく消費税の納税・還付も加味して、1年でどのくらい「お金」が増えたかで考えます。
A社はいくらお金が増えたか…
入ってきたお金
(海外のお客さんからのパソコン代金収入)100億円
(国から消費税還付金)3億円
【合計】103億円
出て行ったお金
(パソコンメーカーへの仕入れ代金支払)63億円
【合計】63億円
増えたお金
【差引】40億円
B社はいくらお金が増えたか…
入ってきたお金
(国内のお客さんからパソコン代金収入)105億円
【合計】105億円
出て行ったお金
(パソコンメーカーへの仕入れ代金支払)63億円
(国へ消費税の納税)2億円
【合計】65億円
増えたお金
【差引】40億円
A社もB社も結局同じ金額で仕入れて同じ金額(本体価格100億円)で売れば同じようにお金が残る様になっています。
この様に輸出企業にとっても不公平にならないように払った分の消費税はマイナスして納税する仕組みにして消費税について企業が損も得もしないようにしています。
この仕組みが無ければ輸出企業は仕入れに係る3億円の消費税が「払い損」になってしまうのです。
『結論』 消費税は輸出企業を儲けさせることはない
ここまでが理論のお話です。
このことだけであれば上記の結論の通りです。
それ以上でも以下でもなく予見は入る余地がありません。
ただ…
理論と現実は差があるものです。
もうちょっと深く考察する必要があります。
ここから先は「理論」や「法律」、「ルール」に基づく話ではありません。
そのため、「絶対そうなる」とは限りません。
私の考えに基づくものと思って下さい。
まぁ、私の空想小説だと思って読み進めて頂ければ…
今までの例は、現行の消費税率(5%)のケースで説明しました。
では、3年後の税率10%になった場合はどうでしょうか?
もちろん『輸出企業のA社が消費税の還付によって儲けているわけではない』という点については税率が変わってもまったく変わりません。
A社は理論上は消費税率が上がっても損も得もしません。
でも「税率が上がると売れ行きや利益にどう影響するか?」という問題では大きく違います。
A社は海外向け、B社は国内向け。
当然ですが、日本国内の消費者は同じものを買うのに消費税率が上がれば、その分沢山お金を払わないと買えません。
消費税が上がっても給料も上がれば別に構いませんが、給料が上がらずに代金だけ上がれば今まで通り買い物をしていたら帳尻が合いません。
税率が5%から10%に上がると‥‥
本体価格10万円のパソコンの総支払額は10万5千円から11万円になります。
5千円赤字です。
「本当はパソコン古くなったから買い換えたいけど来年まで我慢するか」
って、言う人も出てくるかもしれません。
そんな訳で、B社は10万円のパソコンを10万台売って100億円の売り上げを上げていましたが、増税の影響で8万台しか売れなくて80億円になってしまうかもしれません。
B社は、沢山売るため泣く泣く値下げをするかもしれません。
消費税率は変えられませんので本体価格をさげます。
9万6千円(消費税9,600円)消費税込105,600円でどうだ!
消費税込みをほぼ同じ価格105,600円で9万5千台売れれば、91億2千万円の売り上げは何とか確保できます。
でも、仕入れ価格が6万円のままだと利益は1台あたり4万円から3万6千円に減ってしまいます。
年間の利益は40億円から34億2千万円になってしまいます。
それじゃぁ、大変です。
ここから社員の給料も事務所の家賃も支払わなければならないのですから、家計と同様に帳尻が合わなくなってしまいます。
そうすると、今度は、パソコンメーカーに
「1台6万円じゃ、厳しいから5万7千円にしてよ」ってお願いします。懇願です。
(消費税増税分を下請業者に転嫁しようとする行為は「下請法」で禁止されていますが、安く仕入れできる企業をチョイスするのは競争原理では当たり前のことですから上記の様にお願いされなくても下請業者は値下げせざるを得ないこともあるかもしれません)
他のメーカーにお客さんを取られたら大変ですからこのメーカーC社も値引き要請に応じます。
そうするとB社は1台あたり3万9千円の利益が出ます。
利益は37億円余りに回復します。40億円には届きませんが、他を節約すればなんとかやりくりできるかもしれません。
さて、海外に販売するA社はどうでしょうか?
販売価格に消費税は課されませんので、お客様(海外の)にとって、日本国内の税率が上がろうが下がろうが直接的には関係ありません。
従って、日本の消費税率の増加は海外のお客さんの購買意欲に影響しません。
A社は順調に今までの売り上げをキープします。
しかもC社は最近B社に安くパソコンを卸してます。
当然「うちにも同じ値段で卸してくれないと買わないよ」なんて言えば、C社は値引きに応じなくてはならないかもしれません。
輸出で儲けているA社も国内の相場の低価格化の恩恵を受けることができるかもしれません。
そうするとA社は1台あたり4万円の利益から4万3千円に増益です。
年間売り上げは増税前の100億円と変わりませんが仕入れ値が60億円から57億円に下がって40億円から43億円に増益です。
ホクホクですね。税率が上がってホクホクです。
ここでは「消費税の税率の上昇は、国内の購買意欲にのみ影響する」という、ちょっと大雑把すぎる前提で話をしていますが、実際にはこんなに単純じゃありません。
例えば、国内消費の落ち込みが為替相場に影響して円高、円安、どっちに振れるかで、輸出企業は利益が全然違います。
ただ、そういう不確定要素が大きな影響を及ぼさず直接的な影響だけ考えれば、私の前提条件は、可能性がある話にも見えますよね。
そうしたらA社の様な会社はもしかしたら、
「消費税増税 ウェルカム!」
かもしれませんね。
日本を代表する経済団体は『企業経営者の集まり』です。企業が儲かることが利害の第一です。
その経済団体が消費税増税を推進しているのがもしこんな理由だとしたら‥‥。
少なくとも
『輸出企業は消費税還付金で儲けてる、税率が上がると還付金が沢山入るから増税に賛成しているんだ!』
というような、法律を知っていればその主張が間違っているのがすぐわかるような陳腐な理論を振りかざすよりはましではないかと思っています。
今回は私の空想小説にお付き合い頂きました。
ありがとうございました。<(_ _)>
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