【消費税95%ルールが適用できない!?】 [会計・経理・税務]
現在、政府は消費税増税の議論で大変な騒ぎになっていますが、経理の現場では増税とは別に(厳密に言えばほとんどの企業で増税になりますが…)、新しい法律により業務の見直しが必要となっています。
既にご存知の方には特に目新しい情報にはならないかもしれませんが、もし経理の現場で働いている方で
「え?何それ?」
という方がいらっしゃいましたら、確認してみて下さい。
また、経理をご存じない方にもせっかくの機会ですので、かみ砕いてご紹介したいと思います。
これを国がもっていくわけですが、どうやって徴収しているかご存知でしょうか?
例えば電気店で105,000円のパソコンを買ったとします。
そうすると消費税は5,000円ですね。
電気店は税務署に5,000円を納めるのでしょうか?
そうではありません。
ざっくり言ってしまうと、こういうことです。
電気店はメーカーからこのパソコンを63,000円で仕入れたとします。
そのときに電気店はメーカーに消費税3,000円を支払っているわけです。
従って、電気店は
5,000円-3,000円=2,000円
の消費税を納めているわけです。
「それでは電気店は客から預かった5,000円の消費税のうち、3,000円の消費税は着服しているのか?」
って話になるかというとそうではありません。
この3,000円はさきほどの通り、電気店からメーカーに行くわけです。
従ってまわりまわってメーカーが税務署に納めているわけです。
最終消費者が負担する消費税5,000円を流通する過程ごとに分けて支払っているわけです。
ですからメーカーも実は3,000円を税務署に納めているわけではなく部品代として支払った1,500円の消費税は差し引いて1,500円だけ払っているのです。
部品メーカーは材料屋さんに支払った消費税を500円から差し引いて…
というように仕入れが発生するごとに同じ計算が続き結局全部を合計すると
「パソコンの購入にかかる消費税5,000円が税務署に納められる」
という仕組みになっています。
支払う側から考えると
「売上にかかる消費税」-「仕入れにかかる消費税」=「納める消費税」
です。
ほとんどのものが課税商品です。
では非課税商品ってどんなものがあるでしょう…
消費税の納税額は販売先から預かった消費税から仕入れ先に支払った消費税を差し引いた金額ですから…
375万円-250万円=125万円
これは簡単ですね。
この建設会社の消費税の納税額を計算するには仕入れの際に支払った消費税がいくらだったのかを知る必要があります。
支払った消費税額は250万円となります。
建設会社が税務署に納める消費税は売上の消費税から仕入れの消費税を引くから…
250万円-(100万円+100万円+50万円)=0円
あれれ?消費税ゼロ円???
なんかおかしいですね。
消費税法では、
課税売上に対して支払った課税仕入れにかかる消費税だけ納税額の計算で差し引いてもいいですよ
ってルールがあります。
建設会社の仕入れのうち、土地造成費用は土地の仕入れとしてカウントするため非課税売上である土地の販売に関する費用として支払った造成費用にかかる消費税は納める消費税の計算で引いちゃだめですってことです。
従って正しい計算は
250万円-(100万円+100万円+50万円)=0円 150万円
となります。
ここまでは良いでしょうか?
整理しますと…
これは1年間の売上全体に占める課税売上割合が95%以上であれば仕入れにかかる消費税がどの売上に対してかかっていたとしても納める消費税を計算をするときに全額差し引いていいですよっていうルールです。
課税売上割合(%)= 課税売上(税抜)/全体の売上(税抜)
仮にそれぞれの会社の課税売上割合が以下の様になっていたとします。
(建設会社の課税売上割合)
5,000万円/1億5,000万円=33.33%
(販売会社の課税売上割合)
8,000万円/2億8,000万円=28.57%
上記の数値ですと2社とも95%ルールは使えません。
従いましてさっきの計算通りです。
土地を売買する建設会社とか不動産会社、有価証券を売買する証券会社などは非課税売上がたくさんあるかもしれませんが、どちらかというと少数派です。
では一般企業は非課税売上がゼロかというとそうでもないんです。
何だと思いますか?
そうです、預金の利子です。
「売上にかかる消費税」って表現なので「利子が売上?」って思われるかもしれませんが、消費税法上は収入は売上という考え方です。
低金利で預金の利子なんて微々たるものですが、どこの会社でも預金口座を持っていればいくらかは利子がつきますよね。
でも、もし非課税売上が利子だけならば「課税売上割合」は限りなく100%に近づきますよね。
従って95%ルールが適用されるので課税仕入れが課税売上/非課税売上どちらに対する仕入れかなんて気にしないで済んでいました。
ところが…
そうすると経理担当者は今まで気にもしてなかったことを考えなくてはなりません。
経理処理、どうやってやったらいいんだろう?
今日は、経理担当者でなくてもわかるところまでのお話でしたが次回は経理担当者が気を付けるべき論点をお伝えしたいと思います。
続きはコチラ ↓
【続 消費税95%ルールが適用できない!?】
実際の仕訳例が確認するなら ↓
【消費税95%ルールが適用できない場合の仕訳の注意点】
っていう話…
今回お伝えした消費税の計算構造を知っていると結構法律を作るのたいへんだろうなぁ、経理処理の現場は大混乱だろうなぁって考えちゃいます。
スーパーで売っているお肉って、むき身の肉で売られていませんよね。
プラスチックの容器とか紙のラベルが貼ってあったりして…
スーパーの肉は、「非課税売上」、そうすると精肉工場から仕入れるパック詰めされた肉は「非課税仕入れ」ってことは、精肉工場から見ればスーパーに売ったパック詰めした肉は「非課税売上」。
ここまではいいとして、
精肉工場が仕入れたプラスチック容器は、非課税仕入れ?課税仕入れ?
もし非課税仕入れとなると…
プラスチック容器販売業者にとって精肉工場に販売したプラスチック容器は「非課税売上」だけど、化粧品工場に販売したプラスチック容器は「課税売上」?
そうなるとプラスチック容器業者は、販売の都度
「この容器はいったい何に使うんですか?」
なんて聞かなきゃならないですかね?
それでも業者間取引なら、まだいいですが…
100円ショップのダイソーに
容器を仕入れに来た業者にはどうします?
レジに並んでいる人が
一般消費者か業者かなんてよくわかりませんよね?
「面倒だから、プラスチック容器は全部「課税取引にしよう!」
なんてことになるかもしれません。
そうすると精肉工場は…
スーパーにははプラスチック容器こみで「肉」(非課税商品)として売っているので
プラスチック容器分の消費税はもらえません。
でもプラスチック容器業者には消費税を支払わなければなりません。
しかも、消費税の計算で差し引くことも許されませんので、その分利益が減っちゃいます。
そうはいかないのでプラスチック容器込みの「肉」の値段にこっそり消費税分を上乗せしちゃいます。
こんなことをいろいろなパターンで想定していくことを考えると法律は大変な条件分けをしなければならないような気がしますし、
経理処理の現場も大混乱しそうです。
まさか、スーパー行ったら肉に
「肉(非課税)100円、容器(課税)5円」
の値札がついてるなんてことになったら大笑いですが…
馬の牧場のえさは、「競馬用に売られる馬用は課税、馬刺し用の馬のえさは非課税…」
うーん…
既にご存知の方には特に目新しい情報にはならないかもしれませんが、もし経理の現場で働いている方で
「え?何それ?」
という方がいらっしゃいましたら、確認してみて下さい。
また、経理をご存じない方にもせっかくの機会ですので、かみ砕いてご紹介したいと思います。
消費税って誰が税務署に支払っているの?
一般の消費者はほとんどの買い物に消費税を支払っています。これを国がもっていくわけですが、どうやって徴収しているかご存知でしょうか?
例えば電気店で105,000円のパソコンを買ったとします。
そうすると消費税は5,000円ですね。
電気店は税務署に5,000円を納めるのでしょうか?
そうではありません。
ざっくり言ってしまうと、こういうことです。
電気店はメーカーからこのパソコンを63,000円で仕入れたとします。
そのときに電気店はメーカーに消費税3,000円を支払っているわけです。
従って、電気店は
5,000円-3,000円=2,000円
の消費税を納めているわけです。
「それでは電気店は客から預かった5,000円の消費税のうち、3,000円の消費税は着服しているのか?」
って話になるかというとそうではありません。
この3,000円はさきほどの通り、電気店からメーカーに行くわけです。
従ってまわりまわってメーカーが税務署に納めているわけです。
最終消費者が負担する消費税5,000円を流通する過程ごとに分けて支払っているわけです。
ですからメーカーも実は3,000円を税務署に納めているわけではなく部品代として支払った1,500円の消費税は差し引いて1,500円だけ払っているのです。
部品メーカーは材料屋さんに支払った消費税を500円から差し引いて…
というように仕入れが発生するごとに同じ計算が続き結局全部を合計すると
「パソコンの購入にかかる消費税5,000円が税務署に納められる」
という仕組みになっています。
支払う側から考えると
「売上にかかる消費税」-「仕入れにかかる消費税」=「納める消費税」
です。
消費税がかからない商品・サービスとは?
ところが、世の中で売っている「商品」には「消費税がかかるもの(課税)」と「そうでないもの(非課税)」があります。ほとんどのものが課税商品です。
では非課税商品ってどんなものがあるでしょう…
- 土地の売買
- 家賃(住居)
- 病院の治療費
- 預金の利子
- 株式の売買
- 学校の教科書
消費税の納税の仕組みを実例で確認
〔実例〕
建設会社が土地付きの1戸建てを売り出して、それを住宅販売会社がそっくり買って利益をのせて一般消費者に販売した
建設会社が土地付きの1戸建てを売り出して、それを住宅販売会社がそっくり買って利益をのせて一般消費者に販売した
建設会社が土地1億円/建物5,000万円(税抜)で販売会社に販売すると…
1億5,250万円が販売価格となります。
土地 | 1億円 | 非課税なのでそのまま |
建物 | 5,250万円 | 課税なので250万円の消費税がプラス |
合計 | 1億5,250万円 | うち消費税250万円 |
販売会社がこの土地付き建物を購入して5割の利益を上乗せして消費者に販売すると…
2億2,875万円が販売価格となります。
土地 | 1億5千万円 | 非課税なのでそのまま |
建物 | 7,875万円 | 課税なので375万円の消費税がプラス |
合計 | 2億2,875万円 | うち消費税375万円 |
販売業者の納税額
販売業者はいくらの消費税を税務署に納めることになるでしょうか?消費税の納税額は販売先から預かった消費税から仕入れ先に支払った消費税を差し引いた金額ですから…
375万円-250万円=125万円
これは簡単ですね。
建設業者の納税額
では建設会社はどうでしょうか?この建設会社の消費税の納税額を計算するには仕入れの際に支払った消費税がいくらだったのかを知る必要があります。
建設会社の仕入れにかかる消費税を確認する
土地 | 5,000万円 | 非課税なのでそのまま |
土地造成費用 | 2,100万円 | 課税なので100万円の消費税がプラス |
建築外注費 | 2,100万円 | 課税なので100万円の消費税がプラス |
建築資材代金 | 1,050万円 | 課税なので50万円の消費税がプラス |
合計 | 1億250万円 | うち消費税250万円 |
建設会社が税務署に納める消費税は売上の消費税から仕入れの消費税を引くから…
250万円-(100万円+100万円+50万円)=0円
あれれ?消費税ゼロ円???
なんかおかしいですね。
単純に支払った消費税を全額差し引けるわけではない
先ほどの例で建設会社の納税額がゼロになったしまった裏側にはこんなカラクリがあります。消費税法では、
課税売上に対して支払った課税仕入れにかかる消費税だけ納税額の計算で差し引いてもいいですよ
ってルールがあります。
建設会社の仕入れのうち、土地造成費用は土地の仕入れとしてカウントするため非課税売上である土地の販売に関する費用として支払った造成費用にかかる消費税は納める消費税の計算で引いちゃだめですってことです。
従って正しい計算は
250万円-(
となります。
ここまでは良いでしょうか?
整理しますと…
- 納める税金は「売上の消費税」から「仕入れの消費税」を差し引いた残額
- ただし非課税売上に対して仕入れたものは差し引き計算に含めてはだめ
- 非課税売上には土地の売買/預金の利子/居住用の家賃などがある
消費税の95%ルールとは?
消費税計算のルールで有名なものに95%ルールというものがあります。これは1年間の売上全体に占める課税売上割合が95%以上であれば仕入れにかかる消費税がどの売上に対してかかっていたとしても納める消費税を計算をするときに全額差し引いていいですよっていうルールです。
課税売上割合(%)= 課税売上(税抜)/全体の売上(税抜)
仮にそれぞれの会社の課税売上割合が以下の様になっていたとします。
(建設会社の課税売上割合)
5,000万円/1億5,000万円=33.33%
(販売会社の課税売上割合)
8,000万円/2億8,000万円=28.57%
上記の数値ですと2社とも95%ルールは使えません。
従いましてさっきの計算通りです。
95%ルールの適用の現実
ところが世の中の企業のほとんどが非課税の売上なんてありません。土地を売買する建設会社とか不動産会社、有価証券を売買する証券会社などは非課税売上がたくさんあるかもしれませんが、どちらかというと少数派です。
では一般企業は非課税売上がゼロかというとそうでもないんです。
何だと思いますか?
そうです、預金の利子です。
「売上にかかる消費税」って表現なので「利子が売上?」って思われるかもしれませんが、消費税法上は収入は売上という考え方です。
低金利で預金の利子なんて微々たるものですが、どこの会社でも預金口座を持っていればいくらかは利子がつきますよね。
でも、もし非課税売上が利子だけならば「課税売上割合」は限りなく100%に近づきますよね。
従って95%ルールが適用されるので課税仕入れが課税売上/非課税売上どちらに対する仕入れかなんて気にしないで済んでいました。
ところが…
便利な95%ルールが廃止された さてどうする経理担当者?
このルールが廃止(小企業では引き続き残りますが)されました。そうすると経理担当者は今まで気にもしてなかったことを考えなくてはなりません。
経理処理、どうやってやったらいいんだろう?
今日は、経理担当者でなくてもわかるところまでのお話でしたが次回は経理担当者が気を付けるべき論点をお伝えしたいと思います。
続きはコチラ ↓
【続 消費税95%ルールが適用できない!?】
実際の仕訳例が確認するなら ↓
【消費税95%ルールが適用できない場合の仕訳の注意点】
(おまけ)軽減税率と消費税の納税額計算の事務処理について
ところで消費税増税論議とともに浮上するのが「食品」など生活必需品を非課税にして!っていう話…
今回お伝えした消費税の計算構造を知っていると結構法律を作るのたいへんだろうなぁ、経理処理の現場は大混乱だろうなぁって考えちゃいます。
スーパーで売っているお肉って、むき身の肉で売られていませんよね。
プラスチックの容器とか紙のラベルが貼ってあったりして…
スーパーの肉は、「非課税売上」、そうすると精肉工場から仕入れるパック詰めされた肉は「非課税仕入れ」ってことは、精肉工場から見ればスーパーに売ったパック詰めした肉は「非課税売上」。
ここまではいいとして、
精肉工場が仕入れたプラスチック容器は、非課税仕入れ?課税仕入れ?
もし非課税仕入れとなると…
プラスチック容器販売業者にとって精肉工場に販売したプラスチック容器は「非課税売上」だけど、化粧品工場に販売したプラスチック容器は「課税売上」?
そうなるとプラスチック容器業者は、販売の都度
「この容器はいったい何に使うんですか?」
なんて聞かなきゃならないですかね?
それでも業者間取引なら、まだいいですが…
100円ショップのダイソーに
容器を仕入れに来た業者にはどうします?
レジに並んでいる人が
一般消費者か業者かなんてよくわかりませんよね?
「面倒だから、プラスチック容器は全部「課税取引にしよう!」
なんてことになるかもしれません。
そうすると精肉工場は…
スーパーにははプラスチック容器こみで「肉」(非課税商品)として売っているので
プラスチック容器分の消費税はもらえません。
でもプラスチック容器業者には消費税を支払わなければなりません。
しかも、消費税の計算で差し引くことも許されませんので、その分利益が減っちゃいます。
そうはいかないのでプラスチック容器込みの「肉」の値段にこっそり消費税分を上乗せしちゃいます。
こんなことをいろいろなパターンで想定していくことを考えると法律は大変な条件分けをしなければならないような気がしますし、
経理処理の現場も大混乱しそうです。
まさか、スーパー行ったら肉に
「肉(非課税)100円、容器(課税)5円」
の値札がついてるなんてことになったら大笑いですが…
馬の牧場のえさは、「競馬用に売られる馬用は課税、馬刺し用の馬のえさは非課税…」
うーん…
この記事は2012年5月19日現在の法律等に基づいて書かれていますが、各自の計算についてなんら保証するものではありません。
実際に計算する場合には税務署、税理士などの専門家へご確認の上計算をお願いします。
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実際に計算する場合には税務署、税理士などの専門家へご確認の上計算をお願いします。
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